無いならないでいいじゃない 
- 暫定的進化仮説(3)-


前回やり損ねたネオダーウィニズムで説明できない進化の
お話をはじめたいと思う。

ネオダーウィニズムにはある欠点があった。
それは「いや、生物は何がなんでも進化すんだよ!」という
ある意味頑なな姿勢である。

ところで前々回および前回、私が進化という単語を微妙に避けて
いたのに気がついただろうか?
代わりに使っていた単語がある。変化である。

生物というのはカチッと決まった存在ではない。
まぁ生物に限らず万物は流転するし変化するわけだけど。
生物が変化する理由は以下のとおりである。

そもそも生物は遺伝情報としてDNAもしくはRNAを体内に持って
いるが、これを複製する回数は実はすさまじく多い
人間を例にとって考えてみる。

人間は約24億塩基対のDNAを遺伝情報として持っているが、
これを生涯で大体2の50乗回以上も複製するわけだ。
…それでエラーが起きないほうがすごいと思う。

実際エラーが起きる可能性は通常一億分の一以下。
重要なところでエラーが起きたらフェールセーフ働いて細胞死が
引き起こされるというわけで、人間は生きていられる。

ところで人間一人が生み出されるまでに捨てられる配偶子も
大概な数である。

女性が生涯に排卵する卵子は通常数百個である。
しかし男性が生涯に排出する精子は…計算するのめんどい。
大体3兆くらいか?すごい数だ。マンボウ以上かよ

俺たちを構成する50%の遺伝子が、そんだけの数の精子のうち
選ばれた存在なわけだ。そう考えると、びっくりだ。

なんでこんな計算を始めたかというと、とにかく人間の遺伝子の
情報にだってエラーがある
ということだ。
日本人同士だって100万以上、世界全体じゃ特殊な例を除き500万の
遺伝子多型が存在するということが最近HapMapProjectで報告されて
いる。

さて。このように生物は変化しうるわけだけど、必ずよくなるかと
いうとそういうものでもないのだ。

例えば遺伝病といわれる病気がある。
確かに病気としては重いし、死の可能性もある。
なんでそんなものが遺伝してしまうのか?
ダーウィニズム的には淘汰されてしまうではないか。

また人間はブドウ糖からビタミンCの代謝を行うことができない。
哺乳類の多くはビタミンCの代謝が可能である。
ということはある種の哺乳類をのぞいて、生肉食べても
ビタミンCが摂取できるな。
…生だと当たるしむしろレモンでも食ってろ。
イヌイットの人たちは実際そうやってるけど、特殊な例だ

そう、それなのだ。
人間がサルだったころ、寿命は短かった。
周りは緑豊かでビタミンC豊富な新鮮な果物とかいっぱいあった。

そういう環境において、ビタミンCの代謝経路が破壊されたと
しても、別に生存には何の影響も無い。
長生きもしないのだから遺伝病が発病する前に死んでしまう。
その前に子供残せば問題なかったわけだ。
(それか子供残すのに影響がないかどちらかで)

かくしてこのように生存に不利な遺伝的変異も、その環境において
は別にどっちでもいいというような変異は十分残りうる。
ネオダーウィニズムと真逆の「survival of the luckist
いうならば

運が悪けりゃ 死ぬだけさ 死ぬだーけぇーさぁー♪

という思想、たまたま運がいい奴の持ってる遺伝子"も"生き残った、
というのが分子進化の中立説なのである。

これを1986年に木村資生らが提唱したときにはかなりの反発が
あったが、実際に遺伝子の変異を見ると、中立的な変化が
かなり多数存在していることがわかっている。
今ではかなり一般的な進化仮説のひとつである。

実際人間に限らず、アシナシイモリの目なんかも洞窟という
環境じゃいらないから、どっちでもいいということなんだ
と思われる。

人間の盲腸の虫垂なんかもいらないのに残ったんだろうなぁ。
…まぁ実のところそういう今んところ要らないものが将来的に
必要になってこないとも限らないわけで。

あってもなくてもいいやって物がどっちに転ぶかは時と場合に
よる
よなぁと思うわけです。

さて、大きな流れとしてはこんなもんでひとまず終わりです。
次回は定行進化とか個体発生と系統進化とか今西進化仮説とか
をつらつらとやることにします。ではまた。

 

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